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お見舞いに菊
毎年、夏には母の実家の長野に帰省していました。
当時、わたしは東京に住んでいたので、高原にある母の実家は、夏は避暑地のように涼しくて、毎年行くのを楽しみにしていました。
母の実家のすぐそばには、母の姉が嫁いだ家があります。
母の実家へ行ったときは、その伯母の家にもお邪魔していました。
その家には、わたしの従兄弟にあたる兄弟が住んでいました。
従兄弟の兄とは、15歳くらい年が離れていて、その頃はすでに社会人でした。
わたし達、小さい従兄弟が来ると、いつもお小遣いやお年玉をくれる優しい人でした。
あれは、小学校高学年の時の出来事でした。
母の実家に行って、それから伯母の家に行きました。
その従兄弟もちょうど家にいたのですが、お腹が痛いと苦しみ出しました。
脂汗が出るほどの激痛で、救急車に運ばれて行きました。
どうやら胆石だったようです。
何日か入院することになりました。
わたしとわたしより3歳年下の従姉妹で、お見舞いに行くことに決めました。
いつもお小遣いをもらったり、遊んでもらったりしているから、こんな時こそ、お花を持っていきたいねとふたりで話し合って、病院に行く前に花屋に寄りました。
バラとかガーベラとか華やかな花に惹かれたのですが、値段が高くてふたりのお小遣いを出し合っても買えませんでした。
そこで、目に付いたのが、菊の花束です。
ひと束500円くらいでした。
これなら、ふたりで買うことができます。
しかも、けっこうな量が入っているので、見栄えがします。
迷わず、わたし達は菊の花束を買いました。
そして、病院に行きました。
従兄弟は、痛みも取れ、元気になっていました。
元気な顔を見られて、わたしも安心しました。
そして、従姉妹とふたりで菊の花束を渡しました。
従兄弟は菊を見て、顔を引きつりながら、
「あ、ありがとう」と受け取ってくれました。
わたしと従姉妹は、満足して帰りました。
あの時、菊は死んだ人に飾る花だなんて、ちっとも知りませんでした。
お見舞いに菊の花束を渡すなんて、いくら子どもとはいえ、とんでもない失敗をしてしまいました。
それ以来、お見舞いの時は、マナーを確認してから行くようにしています。
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